3. E95とk1ファクターの関係

k1とE95

図3:k1とE95

ここでは、E95とk1ファクターの関係について述べます。k1ファクターはプロセスの困難さを示す一つの定義であり、ターゲットとするデザインルールと露光装置のNAおよびレーザの露光波長から、

k1 = デザインルール x 露光装置のNA/レーザの露光波長

の関係で決まります。
通常、半導体の量産工程においては高い歩留まりを実現するため、k1は0.4近辺に設定し、それに見合った露光装置の NAとレーザの露光波長を選択します。しかし、最近に見られるようにターゲットのデザインルールのシュリンクが進むと、露光装置のNAの限界とレーザの短 波長化の困難さから、k1を0.3近くまで低減させることが必要になってきています。例えば、KrFプロセスにおいて90 nmを実現する場合、ArFプロセスで65 nmを実現する場合がこれにあたります。コストの観点から見ると、k1を小さくすることは、ターゲットに対してNAが比較的小さく、より波長の長いレーザ を使うことから、装置価格の低減が実現でき、半導体チップの製造コストを抑えることができます。過去に90 nmはArFプロセスで実現することが主流であったのが、近年ではKrFプロセスで実現させる動きがあるのがこの流れです。

一方、k1を小さくすることは、製造プロセスにおいては限界を追求するため、歩留まりが低下する可能性があります。この向上のためレチクルを工夫して解像度を高める技術や露光装置のNAを擬似的にあげるための液浸技術の導入が必要となってきています。

E95はk1ファクターの低減に大きく寄与します。図3に各k1ファクターに必要なE95の上限値を示します。図3よ り、k1が小さくなるにつれ、より小さなE95が必要になっていることが分かります。これは、ターゲットデザインルールが小さくなるにつれ、露光装置で発 生する色収差の影響を小さくする必要があり、より小さいスペクトルの分布が要求されることによります。例として、KrFプロセスにおけるk1が0.4の世 代はターゲットデザインルールが150 nmであり、E95の上限値は約1.8 pmでした。これに対しk1が0.3の世代(ターゲットデザインルール90 nm)ではE95を0.8 pmまで小さくしないと色収差の影響で解像できなくなります。図で示す各k1に対するE95は、ターゲットを解像すると言う意味で必要最低条件となりま す。ここで疑問となるのは、E95の上限値さえ守っていればCDの均一性も確保できるのかということです。

E95安定性

CD均一性へのE95の安定性の影響

図4:CD均一性へのE95の安定性の影響

E95に上限値を設定し、それ以下ならば変動しても問題が無いと考えられていたのは、k1が0.4以上の世代の話です。k1が0.4より小さくなるにつれ、E95の変動は直接的にCDに影響を与えています。

図4はKrFプロセスにおいて、E95の変動が引き起こすCDの変化(1pm当たりの変化量)をk1ファクター毎に推定 したデータです。照明条件、用いるレジストの特性などにより多少の差異は見られますが、ほぼ平均的な結果をプロットしています。これより分かることは、 KrFプロセスといえどもk1が0.3の世代になると、E95がわずか1 pm変化するだけで、CDは7-8 nm変化します。これはk1が0.4世代の4倍に相当します。ArFプロセスに関しては、KrFプロセスの約2倍の影響度が確認されています。すなわち、 k1を0.3まで小さくすると、その影響は14-16 nmと大きくなります。このレベルのCDエラーは当然無視することのできない大きさであり、レーザのE95の安定化が次世代プロセスにとって、改善しなけ ればいけない大きな課題であること分かります。

この調査過程で判明した事実として、E95が特に影響を与えるのは孤立線であり、密集線への影響は小さいことです。すな わち、粗密が混在したパターンで問題となるバイアスの発生などがE95と深く関わっています。これに関する詳細な検討に関しては、後の章において言及します。

これまでの議論において、レーザのE95が変動する要因について述べ、さらにE95がCDに与える影響度を定量的に示しました。次章においては、ギガフォトンがCDの安定化のために開発したE95の安定化技術に関して紹介します。