4. E95の安定性改善

高分解能回折格子

図5:高分解能回折格子

E95の安定化のためにギガフォトンが着手した最も大きな開発は、E95の大きさを直接的に左右する狭帯域化モジュール (LNM)の高性能化です。LNMの模式図を図5に示します。LNMモジュールはチャンバに隣接している場所に設置されており、フロントミラーとともに光 共振器を構成しています。その役目はスペクトルのフィルタであり、チャンバから発するオリジナル光のE95が数百pmと広いのに対して、LNMを介するこ とで数百分の1まで狭帯域化されます。LNMの構成は、数個のプリズムと回折格子からなります。プリズムはレーザ光を拡大する役目であり、拡大されたレー ザ光が回折格子全面に照射されます。レーザ光は回折格子により反射されチャンバに戻っていきますが、この時に、波長に依存して反射される角度が微妙に変化 します。すなわち、波長分布を空間分布に変換する働きをしています。スリットなどを用い、中心付近の光だけをチャンバに戻すことで、スペクトルの狭帯域化 が実現されます。この原理を利用した技術においては、用いる回折格子を大きくすることでより狭いスペクトル、E95を実現できます。

ギガフォトンが取り組んだ技術は、世界最大の高分解能回折格子を搭載したLNMを開発することでした。図中に従来の回折 格子の配置と、高分解能回折格子の配置を示していますが、両者の大きさの違いは1.5倍以上です。その大きさゆえ、コンパクトに回折格子を配置するデザイ ン、均一な光学波面を実現するマウントの仕方がキーとなりました。

E95に対するF2ガスの影響

図6:E95に対するF2ガスの影響

図6に両者の回折格子で実現されたE95のデータを示します。縦軸にE95を横軸にE95の変動要因であるチャンバ内の F2ガスの圧力を示しています。まず、E95の自体の違いは、高分解能回折格子を用いることで、従来の半分が実現できました。典型的なF2ガス濃度である 300 hPaで比較すると、従来型のE95が1.4 pmであったのに対して、高分解能型では0.7 pmが実現できています。他のF2ガス濃度に関しても同様の差異が見られます。

F2ガスの濃度変化に対するE95の変動に関しても従来型が0.4 pm/100 hPaに対して、0.15 pm/100 hPaと約1/3以下まで改善されています。既に述べたE95の第1番目の変動要因であるF2ガス分圧の変化に対して、大きな改善が見られたことになりま す。

F2ガス制御システム

図7:F2ガス制御システム

F2ガス濃度変化に対してE95の変動が少ないLNMを開発に成功した次のステップとして、チャンバ内のF2ガス濃度を安定化する開発を実施しました。F2ガス濃度を安定化することで、長期間に亘るE95の安定性を確保することが狙いです。

前述しましたように、F2ガス濃度を変化(主に注入による増加)させなければいけない理由は、放電により消費されたF2ガスを補い長期における出力パワーの低下を抑制するためです。しかし、F2ガスを注入しすぎるとE95が大きく変動してしまうことが課題です。

E95を安定化し、さらに出力パワーの低下を抑制する唯一の解決策は、常にチャンバ中のF2濃度を安定に保つことです。 そのために開発した技術が精密なガスコントロール技術です。精密ガスコントロールシーケンスでは、チャンバ内に注入するF2ガスの量をマスフローコント ローラで高精度に制御および把握しています。また、チャンバ内で消費されるF2ガスの量を各指標から読み取ることを可能としました。これより、常にチャン バ内のF2ガス濃度を一定にすることが可能となりました。さらに、F2ガスの注入し過ぎをモニターするため、モニターモジュールのスペクトル幅の計測値を フィードバックし、想定したF2ガス濃度のズレを補正するフィードバックシステムも採用しました。

これらの開発により、チャンバ内のF2ガス濃度は典型値として、常に300-350 hPaに制御することが可能となり、高分解能回折格子との併用により、E95の変動を0.1 pm程度に抑制することが可能となりました。

以上の技術は、2kHz KrFレーザG21K、4kHz KrFレーザG40K、G41Kおよび最近のArFレーザに展開されており、ユーザー先でのCDコントロールに大きく貢献しています。