1. 概要

これまで

半導体製造用エキシマレーザ装置というと、ほぼ全ての方がランニングコストの高さを一番に指摘されます。ランニングコストが低い装置が良い装置との 概念も浸透しています。事実、レーザ装置の各部品を交換すると、数千万円単位の費用が発生し、巨大な半導体産業においても、ランニングコストの意味で、そ の費用の捻出に頭を悩ますユーザーが多いのが現状です。また、露光装置と組み合わされて使われる性格上、ウェーハスループットを左右する一要因となってお り、安定して稼動することが義務付けられています。“低コストと安定稼動”これが、レーザの全てであると言われて久しいのです。

性能はコストと安定稼動だけ?

レーザ装置の性能は実際のウェーハプロセッシング上の解像度、DOF(焦点深度)など、各種キー性能に影響を与えないのでしょうか?答えは大きく影響する(はず)です。代表的なものではスペクトルは解像度に、波長はフォーカスに、エネルギーは均一性に影響を与えます。

では、なぜこれまで深くそのディスカッションがされてなかったのでしょうか?これは、露光装置が十分なマージンの上で稼動していたからと言わざるを 得なかったからです。すなわち、ターゲットとなる解像力に対して、NA(開口数)、k1(k1=デザインルール x 露光装置のNA/レーザの露光波長)が十分大きく取れていたためです。しかし、ここに来て、KrFでの90 nmノード、ArFでの65 nmノードの実現にむけて、これ以上レーザの性能を無視することができなくなりつつあります。

スペクトルの影響

身近な例でレーザの重要性を紹介します。レーザの性能で最も重要な性能指標の一つにスペクトルが挙げられます。スペクトルの詳細については後ほど説明しますが、このスペクトルの変動は直接的にCD(Critical Dimension)に影響を与えます。

ロジックパターンの中で最も重要なのが、ゲート寸法の制御であることは周知の通りです。ゲートは孤立線で形成されています。ArFプロセスでは、 90 nm(k1=0.4)のパターンを形成する時、スペクトル1 pm当りの孤立線のCD変化は、3 nm程度です。また、k1を0.35まで下げると、その影響度は、なんと1 pm当り8 nmも発生することが確認されています。実際のArFレーザのスペクトル変動幅が約0.5 pmであることを考慮しますと、レーザのみの影響でCD変化が4 nm発生することになります。KrFプロセスに関してもArFほどではありませんが、同様の影響を与えます。こちらの影響度は、110 nm(k1=0.35)クラスのパターンで1 pm当り4 nmです。

CDの寸法制御を数パーセントに抑制する必要がある近年のリソグラフィの世界において、レーザの影響を無視することができないことが、理解できる事例です。